各用語の最後に、本書でその用語が使われている頁数が記載され、主だって描かれている頁は、太字になっています。また、各用語の説明のさい、他の箇所で別の用語の説明がなされている場合、その用語に(→)の記号が付されていますので、その用語の説明を参照してください。

我−汝関係と我−それ関係

「我−汝関係」には、自我(自己)意識が形成され、自分と他の人との(自・他の)区別ができるようになる幼児の発達の前後の違いにそくして、乳幼児期の我−汝関係と自己意識形成後の我−汝関係に区別されます。「汝」というのは、ドイツ語でDu(ドゥー)のことで、家族内の親しい二人称(親称)に対して使います。しかし、この汝は、人間にかぎらず、身の回りの自然だったり、書物で描かれている精神だったりして、人間が全身全霊でそのつど向き合う汝であることができます。この態度で汝に向き合うとき、我−汝関係が成立するというのです。

それに対して、「我−それ関係」というのは、人間や自然や物事を客観的に距離をもって観察する態度のことです。測定と評価など、この我−それ関係は、すべて形式知(→)で表現されます。言語と数式や記号による形式知で表現されるすべての学問の世界が、「我−それ関係」において成立しているといえるのです。

文法の用語である「人称」によって述べれば、「我−汝関係」は、「自分と相手が対する一人称−二人称関係」であって、「我−それ関係」は、相手を観察の対象とみなす「一人称−三人称関係」であるといえます。

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