各用語の最後に、本書でその用語が使われている頁数が記載され、主だって描かれている頁は、太字になっています。また、各用語の説明のさい、他の箇所で別の用語の説明がなされている場合、その用語に(→)の記号が付されていますので、その用語の説明を参照してください。

脱構築(だつこうちく)

赤ちゃんだったときの“自分”の体験に戻る方法が脱構築の方法と呼ばれます。大人である私たちが備えている「意味づけや価値づけ(受動的綜合と能動的綜合)の全体」から、赤ちゃんが備えていないと思われる「知覚や想起、言語使用」などの能動的綜合を取り除き解体してみる試みが脱構築の方法なのです。しかし、この方法は、たんに「赤ちゃんだったら」と想像したり、空想したりすることではありません。大人の行う空想や想像は、自我の意識の働く能動的志向性による能動的綜合に他ならず、自我の意識が成立していない感覚による受動的綜合の世界に、大人のもつ自我から発する自己中心的な予測や関心を押し付けてはなりません。

掲載ページ⇒68, 70

伝染泣き

生後4ヶ月ごろまでの赤ちゃんは、どんなときでも、周辺に赤ちゃんの泣き声が聞こえると、まるで自分が泣いているように泣き出してしまいます。泣くことが伝染してしまうので、「伝染泣き」といわれるのです。この伝染泣きが起こるのは、原共感覚(→)の説明にあったように、この頃までの赤ちゃんは、身体の外から与えられる外部感覚と身体内部で感じる内部感覚の区別がつきません。それで泣いているときに自分の身体の外部から聞こえる泣き声と、泣くときに体内で感じる泣くときの身体の運動感覚の区別がつかずに、自分が泣いている状態が引き起こされるしまうからだと説明されるのです。

掲載ページ⇒70, 76, 80, 86, 93, 94, 117, 202, 315