各用語の最後に、本書でその用語が使われている頁数が記載され、主だって描かれている頁は、太字になっています。また、各用語の説明のさい、他の箇所で別の用語の説明がなされている場合、その用語に(→)の記号が付されていますので、その用語の説明を参照してください。

喃語の模倣

ほぼ、生後8ヶ月を頂点にして生じる赤ちゃんの、リズミカルに反復される言葉以前の発声が喃語と呼ばれます。この喃語が母子間で模倣されるとき、“自分”で発するときの喃語で「聞こえる喃語の“声”」とそのときの「“運動感覚”」とが、ペア(対)になって感じられているのに対して、“母親”がその喃語を模倣して発するときには、その“声”だけ聞こえて、その“運動感覚”を感じないことに気づくとされています。このことだけでなく、この喃語の模倣で明らかにされるのは、母親が喃語を模倣するとき、少し調子を変えて、強く大きくしたり、弱く小さくしたりすると、その変化にともなう情動の変化(強い気持ちや弱い気持ち)も赤ちゃんによって真似られることです。このとき、喃語の模倣が情動の模倣になり、情動的コミュニケーションの土台が築かれることになるのです。

掲載ページ⇒76, 78, 80, 82, 86, 89, 92, 94, 98, 100, 104, 117, 315

人間関係の三層構造

人間関係は、M. ブーバーの「我−汝関係(→)」と「我それ関係(→)」との区別を基準にして、その成り立ち(構造)が三つの層によって「人間関係の三層構造」として説明されます。第一の層は、幼児期の「我−汝関係」が生じている段階です。ここでは、「自分が自分であるという自己意識」が形成しておらず、母親を代表にする「汝(あなた)」に対して全身全霊で直向きに、受動的綜合(→)による情動的コミュニケーション(→)をとおして向かっています。第二の層は、能動的綜合(→)による言語的コミュニケーションが成立している段階であり、「我−それ関係」において、物事が客観的に理解され、人間関係が社会生活における経済や政治の活動として展開され、学問と文化が繁栄する段階です。第三の層は、大人である成人の間に「我−汝関係」が生じる段階です。このとき、相手とともに、共通した課題に、お互いに無心に我を忘れるほどに全身全霊でとりくむことで、お互いにとっての真の出会いが生じるような人間関係が実現するとされます。

掲載ページ⇒14, 316

- 人間関係の二重構造

人間関係は、受動的志向性(→)による受動的綜合(→)と能動的志向性(→)による能動的綜合(→)による、言い換えると受動的綜合による情動的コミュニケーション(→)と能動的綜合による言語的コミュニケーション(→)による相互基づけ(→) によってできあがっています。この情動的コミュニケーションという下層部と言語的コミュニケーションという上層部との二重の構造が、人間関係の二重構造と呼ばれます。

掲載ページ⇒47, 52, 62, 64, 118, 129, 153